
用途が違うと、ここまで変わる|商業施設・住宅・福祉施設における設備設計の考え方

用途が違うだけで、設備設計の前提は大きく変わります
設備設計は、建物の見た目以上に「その建物が、どのように使われるか」によって内容が大きく変わります。
商業施設、住宅、福祉施設、学校など、用途が異なれば必要な設備、守るべき基準、設計時に注意すべきポイントもまったく違ってきます。
発注者が、用途ごとの専門知識をすべて理解しておく必要はありません。
ただし、用途が変わるだけで、設備設計の考え方や制約が大きく変わるという点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。
この記事では、設備設計の現場で実際に注意している視点をもとに、「用途によって、どんな違いが出てくるのか」をわかりやすく解説します。
なぜ「用途の違い」が重要なのか
建物の用途は、単なる分類ではありません。
設備設計においては、
- 適用される法令・基準
- 必要となる設備の種類や考え方
- 工事の進め方や制約条件
などに直接影響します。

用途の認識が曖昧なまま設計を進めてしまうと、途中で「前提が違っていた」ことが判明し、設計のやり直しや、工期・コストへの影響が出るケースもあります。
だからこそ、用途による影響の大きさを理解し、それを前提に設計を進められる体制が重要になります。
商業施設の場合:将来の変化を見据えた設計が求められる
商業施設では、住宅とは異なり、「店舗の入れ替わり」や「営業しながらの工事」が前提になるケースが多くあります。
そのため、設備設計では「現状問題なければ良い」という考え方では不十分です。
例えば、以下のような点が重要になります。
- 店舗ごとに設備が独立しているか
- 新規出店や閉店時の工事が、他店舗の営業に影響しないか
- 工事時の騒音・振動・臭気への配慮ができるか
こうした視点が抜けていると、将来的な改修やテナント入れ替え時に大きな負担が生じることがあります。
商業施設では、将来の運営まで含めて考えた設備設計が欠かせません。
住宅・共同住宅の場合:仕様や居住環境への配慮が重要
住宅や共同住宅では、住む人の快適性や安全性が最も重視されます。
また、案件によっては以下のような前提条件があります。
- デベロッパーごとの細かな仕様ルール
- グレードによる設備内容の違い
- 改修工事で「居ながら工事」を行うケース
特に団地や集合住宅の改修工事では、工事をしていない住戸の上下水を止めないよう、仮設設備や工程管理を慎重に計画する必要があります。
住宅用途では、生活への影響を最小限に抑えるための配慮と経験が、設備設計の質に直結します。
福祉・医療施設の場合:用途区分の違いが設計に大きく影響する
福祉施設や医療施設では、適用される基準や法令が非常に細かく分かれています。
例えば、
- 建物の使い方によって、消防法上の区分が変わる
- 設計開始時と、申請時の用途が異なると必要な設備が変わる
といったケースも少なくありません。
用途の整理が不十分なまま進めると、設計途中でやり直しが必要になることもあります。
福祉・医療系の建物では、設計を始める前に用途をしっかり整理することと、その分野の経験がある設計会社を選ぶことが特に重要です。
学校・公共施設の場合:運用スケジュールへの配慮が不可欠
学校や公共施設の改修工事では、工事できる日や時間が限られるケースが多くあります。
例えば、
- 授業や行事の都合で、その日しか工事できない
- 利用者がいる前提で工事を進める必要がある
といった制約があります。
こうした用途では、事前の聞き取りや工程管理をどれだけ丁寧に行えるかが、計画全体の成否を左右します。
用途に応じた「工事の進め方」まで考慮できるかどうかは、設備設計会社の経験値が問われるポイントです。
用途の違いを踏まえて、設備設計会社を選ぶことが大切
ここまで見てきたように、設備設計は用途によって考え方や注意点が大きく変わります。
発注者が、これらをすべて判断する必要はありません。
ただし、用途による違いを前提に、丁寧に確認・整理しながら進めてくれる設計会社かどうかは、会社選びの重要な判断軸になります。

設備設計会社を選ぶ際の具体的なチェックポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ:用途の影響を知っておくことが、失敗を防ぐ第一歩
建物の用途が違えば、設備設計の前提や注意点も大きく変わります。
発注者が用途ごとの専門知識を持つ必要はありませんが、「用途によって、設計の考え方がここまで変わる」という点を知っておくだけでも、打合せや判断がスムーズになります。
用途の整理や計画内容に迷いがある段階でも、設計と並行して確認・整理していくことは可能です。
気になる点があれば、計画の初期段階からでも、お気軽にご相談ください。


