設備設計は「ワンストップ」で依頼すべき?分離発注との違いを現場目線で解説

設備設計会社のチームが空調・電気・衛生の図面とBIMを使ってワンストップで設計検討している様子
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設備設計を「まとめて任せる」か「分けて頼む」か、迷っていませんか?

設備設計を依頼するとき、空調は空調の会社、電気は電気の会社……と、分野ごとに別々の設計会社へ依頼するケースは珍しくありません。

その一方で、空調・電気・衛生・防災などをまとめて1社に任せる「ワンストップ型」の設計会社もあります。

「結局、どちらに頼めばいいんだろう?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

実は、ひとくちにワンストップと言っても中身はさまざまです。「ただ窓口がひとつにまとまっているだけ」のケースもあれば、「空調・電気・衛生・防災を、同じチームが並行して設計するケース」もあります。後者であれば、品質面でも進行面でも大きなメリットが期待できる、というのが私たちの実務上の実感です。

もちろん、「ワンストップなら何でも安心」とは限りません。会社によって対応力に差があるのも事実です。

この記事では、分離発注で起きやすい困りごとと、ワンストップで依頼するメリットについて、できるだけわかりやすくお伝えします。最後に、ワンストップの会社を選ぶ際に確認しておきたいポイントも紹介していますので、依頼先を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。

分野ごとにバラバラに依頼すると、何が起きる?

設備設計を分野ごとに別の会社へ依頼する「分離発注」。一見すると、各分野の専門家に任せられるので安心に思えるかもしれません。

しかし実務では、分離発注ならではの困りごとが起きやすいのも事実です。ここでは代表的なものを3つ紹介します。

図面同士がかみ合わない

空調・電気・衛生をそれぞれ別の会社に頼むと、各社が独立して図面を描くことになります。

すると、たとえば「空調のダクトと給排水の配管が同じ場所を通ってしまう」「機器の置き場所が重なっている」といった、図面間の食い違いが起きやすくなります。

こうしたズレは設計段階では見落とされやすく、工事が始まってから現場で調整が必要になることも少なくありません。結果として、工期の遅れや想定外のコスト増につながるリスクがあります。

設計変更のたびに、情報が行き届かない

プロジェクトが進む中で、設計変更はどうしても発生します。

分離発注の場合、1つの変更が生じると、関係する複数の設計会社に対して連絡・確認が必要になります。「どこまでが誰の担当か」「最新の図面はどれか」が分かりにくくなり、修正漏れや認識のズレが起きやすい状態になります。

発注者にとっても、各社の間に入って調整する手間が大きくなりがちです。

分離発注で複数の設計会社から集まった図面や書類を抱え、管理に苦慮する発注者の様子

設計全体の方向性がそろいにくい

別々の設計者が関わると、それぞれが重視するポイントや設計の考え方に違いが出ることがあります。

たとえば、ある会社はコストを最優先に考え、別の会社はメンテナンスのしやすさを重視する——こうなると、建物全体で見たときに設計の方向性がバラバラになりやすくなります。

個々の設計は問題なくても、全体としてまとまりに欠けてしまうのは、分離発注で起きやすい課題のひとつです。

ワンストップで依頼すると、何が変わる?

こうした分離発注の課題に対して、ワンストップで依頼することで得られるメリットは、大きく4つあります。

図面の整合性を、設計段階でまとめてチェックできる

ワンストップの場合、空調・電気・衛生・防災のすべてを同じ設計チームが担当します。

各分野の設計を並行して進めながら、互いの干渉や取り合いを常に確認できるため、配管やダクトのルート、機器の配置などを設計の段階で統合的に整理できるのが大きな強みです。

「現場に入ってから気づく」のではなく、「図面の段階で解決しておける」。この違いは、手戻りを減らすうえで非常に大きな意味を持ちます。

設計変更にもスピーディに対応できる

設計変更が発生しても、関係する図面を一括で調整できるため、対応がスムーズです。

社内で情報が共有されているので、「伝え漏れ」や「確認待ち」による遅れが少なく、変更への対応スピードが早くなります

特にスケジュールにあまり余裕がないプロジェクトでは、この対応力が大きな安心材料になります。

設備設計会社のチームが空調・電気・衛生の図面とBIMを使ってワンストップで設計検討している様子

設計方針が統一されるから、全体のバランスが取れる

1つのチームが全体を見ながら設計するため、コスト・使い勝手・メンテナンス性といった要素をバランスよく調整できます。

各分野を同時に検討しているからこそ、「空調を優先しすぎて、電気のスペースが足りなくなった」といった分野間のしわ寄せにも気づきやすく、早い段階で調整できます。

設計方針が一貫していることで、建物全体として安定した品質につながりやすくなります

発注者の調整負担が軽くなる

分離発注では、複数の設計会社の間に立って調整する手間が、発注者側に発生しがちです。

ワンストップであれば窓口が1つで済むため、確認や連絡の負担が大幅に軽くなります。

「誰に何を聞けばいいか分からない」という状態がなくなることは、日々の業務が忙しい発注者にとって、想像以上に大きなメリットです。

ワンストップでも、ここは確認しておきたいポイント

ワンストップで依頼するメリットは大きいですが、「ワンストップであれば、どこでも安心」というわけではありません。

会社によって対応範囲や得意分野は異なります。依頼前に確認しておきたいポイントを整理しておきましょう。

「図面を描く」だけで終わっていないか?

ワンストップと言っても、対応の深さは会社によってさまざまです。

大切なのは、図面を描くだけでなく、実際の施工段階まで見据えた検討ができているかどうかです。

たとえば、

  • 機器の設置スペースは、現場で実際に確保できるか
  • 配管やダクトの通り方に、施工上の無理はないか
  • 完成後のメンテナンスのしやすさまで考慮されているか

こうした「設計と施工のつながり」を意識しているかどうかで、完成後の使いやすさは大きく変わります。

依頼前に確認しておきたいこと

ワンストップの設計会社を選ぶ際は、以下のような点が見極めのポイントになります。

  • 空調・電気・衛生・防災のすべてを、自社の設計体制で対応しているか
    一部を外注している場合、結局は分離発注に近い進め方になることもあります。
  • 各分野の設計者が同じチームで動き、設計段階から横断的に検討しているか
    設計の打合せに各分野の担当者が同席しているかどうかも、判断材料になります。
  • 図面だけでなく、施工段階の現場条件まで踏まえて設計しているか
    搬入経路やスペースの制約、メンテナンス性まで配慮されているかがポイントです。
  • 自社の建物用途に近い案件を担当した経験があるか
    用途によって設備設計の考え方は大きく変わるため、類似案件の経験は重要な判断材料になります。

すべてを発注者側で見極めるのは難しい部分もあります。初回の相談時に「設計体制について教えてください」と一言伝えるだけでも、その会社の姿勢や実態が見えてくることが多いので、おすすめです。

設備設計会社を選ぶ際のチェックポイントについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

まとめ:設備設計は「全体を見て最適化する」視点が大切

設備設計では、空調・電気・衛生・防災をそれぞれ個別に考えるよりも、建物全体として最適かどうかという視点がとても大切です。

ワンストップで依頼することで、

  • 図面の整合性が保たれる
  • 設計方針が一貫し、品質が安定する
  • 設計変更にスムーズに対応できる
  • 発注者側の調整負担が軽くなる

といったメリットが得られます。

ただし、「ワンストップだから安心」で終わらせるのではなく、施工まで見据えた検討力があるかどうかも、会社選びの大切な判断ポイントです。

また、建物の用途によっても設備設計の考え方や注意点は大きく変わります。用途ごとの違いについて知っておきたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

「分離発注とワンストップ、どちらにすべきか迷っている」
「これから設備設計の依頼先を探し始めるところ」

こうした段階でも、まったく問題ありません。計画の初期段階から、一緒に整理しながら進めていくことも可能です。

まずはお気軽にご相談ください。

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